雇用保険
雇用保険は、労働者が失業した場合の失業中の生活保障や再就職の支援、
雇用の継続が困難となる事由が発生した場合、雇用安定のための助成金の支給、
育児や家族の介護を行う労働者や高齢者の雇用が維持されるための給付金の支給、
労働者の職務能力を高めるための教育訓練への給付金を行うことで、
雇用のセーフティーネットとしての役割をはたしている制度です。
雇用保険の給付
- 高年齢雇用継続給付
高年齢化が進む中で、働く意欲と能力のある高年齢者について、60歳から65歳までの雇用継続を援助・促進することを目的に行われている給付です。
60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者が、原則として、60歳時点に比較して賃金が75%未満の賃金に低下した状態で働いている場合、公共職業安定所へ支給申請を行うことにより、各月に支払われた賃金の最大15%の給付金が支給されます。
この高年齢雇用継続給付には、- 1 雇用保険(基本手当など)を受給していない方を対象とした「高年齢雇用継続基本給付金」と
- 2 雇用保険(基本手当など)の受給中に再就職した方を対象とした「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
- 育児休業給付
少子化の急速な進展や女性の職場進出の進展が見られる現代において、労働者が育児休業を取得しやすくし、その後の円滑な職場復帰を援助・促進することにより、育児をする労働者の職業生活の円滑な継続を目的に行われている給付です。
雇用保険の被保険者が、1歳(保育所入所困難など一定の要件に該当した場合は1歳2ヶ月。さらに一定の要件に該当した場合は1歳6ヶ月。)に満たない子を養育するための育児休業を取得し、育児休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比較して80%未満に低下した等、一定の要件を満たした場合に、公共職業安定所への支給申請を行うことにより支給される給付です。
- 介護休業給付
配偶者や父母、子などの対象家族を介護するための休業を取得した雇用保険の被保険者について、介護休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比較して80%未満に低下した等、一定の要件を満たした場合に、公共職業安定所へ支給申請を行うことにより支給される給付です。
- 失業等給付
失業等給付は、労働者が失業した場合及び雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、必要な給付を行うとともに、その生活及び雇用の安定を図るための給付です。
失業等給付は大別して、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4種類に分けられます。- 求職者給付は、被保険者が離職し、失業状態にある場合に、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にすることを目的として支給される失業補償機能を持った給付です。
- 就職促進給付は、失業者が再就職をするのを援助、促進することを主目的とする給付です。
- 教育訓練給付は、働く人の主体的な能力開発の取り組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を目的とする給付です。
- 雇用継続給付は、働く人の職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的として行われる給付です。
雇用保険の適用事業
労働者が雇用される事業である限り、その業種・規模に関わらず、
全ての事業が当然に雇用保険の適用事業になります。
ただし、個人経営の農林水産業で労働者5人未満の事業は、
加入が事情主と労働者の意思に任される暫定任意適用事業とされています。
ただし、暫定任意適用事業所の事業主であっても、雇用する労働者の2分の1以上が
加入を希望するときは、労働局長に任意加入の申請を行わなければなりません。認可された場合は、加入に同意しなかった労働者を含め、すべての労働者が雇用保険の被保険者になります。
雇用保険は、経営組織として独立性をもった事業所単位で適用されるため、
支店や工場などでも、人事、経理、経営管理などの面である程度独立して業務を
行っていれば、個々の事業所で雇用保険の適用手続きを行います。
独立性のない支店や工場などの場合は、公共職業安定所長の承認を受けて、
本社で一括して雇用保険に関する手続きを行うことになります。
雇用保険被保険者
雇用保険の適用事業に雇用されている労働者で65歳以上で新たに雇用される者など雇用保険法第6条各号に揚げる者以外の者は原則として被保険者となります。
●被保険者の種類
- 一般被保険者(65歳未満の常用労働者)
以下の高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者以外の被保険者をいいます。 - 高年齢継続被保険者(65歳を超えて引き続き雇用される者など)
同一の事業主の適用事業に被保険者として65歳に達した日(65歳の誕生日の前日)の前日から引き続いて65歳に達した日(65歳の誕生日の前日)以後の日において雇用されている被保険者をいいます。 - 短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される者)
季節的に雇用される者のうち次のいずれにも該当しない者のことをいいます。- イ 4ヶ月以内の期間を定めて雇用される者
- ロ 1週間の所定労働時間が30時間未満である者
この場合の「季節的に雇用される者」とは、季節的業務に期間を定めて雇用される者または季節的に入・離職する者のことをいいます。
なお、短期雇用特例被保険者が同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上になるに至ったときは、その1年以上雇用されるに至った日以後は、その方が65歳未満であれば一般被保険者に、65歳以上であれば高年齢継続被保険者になります。なお、事業主に雇用された時点で65歳以上であった場合は雇用保険の被保険者になりません。
- 日雇労働被保険者(日々雇用される者、30日以内の期間を定めて雇用される者)
●雇用保険の被保険者とならない者(雇用保険法第6条より)
- 65歳以後に新たに雇用される者
- 個人事業主、法人の代表取締役・取締役・監査役、合名会社や合資会社の代表社員
※取締役や監査役などの役員は、原則として雇用保険の被保険者になることは出来ませんが、労働者と同じように賃金を得て労働に従事しているような強い労働者性がある場合は、ハローワークで兼務役員の承認をうけて被保険者になることができます。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満の者
「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書などにより、勤務すべきこととされている時間数をいいます。
- 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者。
- 季節的に雇用される者であって、以下のイまたはロに該当するもの
- イ 4ヶ月以内の期間を定めて雇用される者。
- ロ 1週間の所定労働時間が30時間未満の者。
この場合の「季節的に雇用される者」とは、季節的業務に期間を定めて雇用される者または季節的に入・離職する者のことをいいます。具体例としては、冬季に農業・土木業・建設業等の事業に従事できない地域にお住まいの出稼ぎ労働者等が該当し、それ以外の期間(春季~秋季)は地元にて農業・土木業・建設業等に従事しており、地元では「季節的に雇用される者」に該当せず、地元の雇用主(年間を通じての主たる雇用主)との関係を基準として失業等給付を行うことで、季節労働者に対する救済を図るため(出稼ぎ先の)雇用保険の適用が除外されています。
- 学校教育法に規定する学校、専修学校、各種学校の学生または生徒。
- 船員保険法の規定による船員保険の被保険者。
- 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であって、厚生労働省令で定める者。
雇用保険料の計算方法
雇用保険料は、(平成26年度において)
- 農林水産・清酒製造業の事業所
(保険料率 15.5/1000のうち 事業主負担分 9.5/1000 労働者負担分 6/1000) - 建設業の事業所
(保険料率 16.5/1000のうち 事業主負担分 10.5/1000 労働者負担分 6/1000) - それ以外の一般の事業所
(保険料率 13.5/1000のうち 事業主負担分 8.5/1000 労働者負担分 5/1000)
の3種類に区分され、事業の種類ごとに定められた保険料率を使って次の式で計算し、
事業主と労働者が定められた負担割合で負担します。
雇用保険料=(保険年度に支払われた賃金総額 ー その年の4月1日に満64歳以上に該当する労働者の賃金総額)×雇用保険料率
労災保険料と同じく、4月1日から翌年3月31日までの一年間を保険年度とし、
申告及び納付は毎年6月1日から7月10日までの間で行われます。
労働者負担分は、毎月の給料から控除し、事業主は、事業主負担分と労働者負担分を
労災保険料と合算して納付します。
雇用保険二事業による助成金
事業主負担分のうち、労働者負担割合より多い3.5/1000は、雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の費用に充てられます。
- 雇用安定事業として
- 景気の変動、産業構造の変化などに伴い事業活動の縮小を余儀なくされ、休業、教育訓練または出向を行った事業主に支給される「雇用調整助成金」
- 高年齢者、障害者などの就職が特に困難な者を、公共職業安定所などの紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して支給される「特定求職者雇用開発助成金」
- 能力開発事業として
- 事業内職業能力開発計画などに基づき、その雇用する労働者に対し、職業訓練の実施、自発的な職業能力開発の支援を推進した事業主に対して支給される「キャリア形成促進助成金」
- 職業訓練施設の設置運営
※以上の助成金以外にも各種助成金制度が労働者の職業の安定に資することを目的として雇用保険二事業として行われていますが、これらの助成金制度を利用するには雇用保険に加入していることが必要です。