厚生年金保険
厚生年金の目的
厚生年金保険は、サラリーマンやOLなどの労働者(被保険者)が、
一定の高齢になったときの老後の生活の安定を図るための老齢年金や、
病気や怪我をして障害者になった場合、被保険者本人とその家族のための障害年金、
被保険者が不幸にも死亡してしまった場合、ご遺族のための遺族年金などの
給付を行うことにより、労働者およびその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを
目的として運営されています。
厚生年金の適用事業所
厚生年金の適用事業所は健康保険の適用事業所と同じとされていますので、
原則として、健康保険と厚生年金保健は一緒に加入することになります。
※5トン以上の船舶、30トン以上の漁船に乗り込む船員さんについては、昭和60年の改正により船員保険の職務外年金部門が厚生年金保険に統合され、船員保険法1条に規定する船員さんが乗り込む船舶の場合、健康保険の給付に該当する給付が船員保険から支給されるため健康保険の適用事業所にはなりませんが厚生年金については適用事業所になります。
厚生年金の保健者
厚生年金は、政府が保険者として管掌し、実際の運営事務は日本年金機構が行っています。
厚生年金の被保険者
厚生年金の被保険者は、当然被保険者と任意加入被保険者に大きく分類することができます。
- 1.当然被保険者
当然被保険者は、適用事業所に使用される70歳未満の者です。
法人の役員であって法人から労働の対償として報酬を受けている者は、
法人に使用される者として厚生年金の当然被保険者に該当します。
また、学校卒業後に就職予定先である事業所で職業実習を行う場合は、
事実上の就職とされ、実習・見習い社員であっても当然被保険者に該当します。
- 2.任意加入被保険者
- ①任意単独被保険者
任意単独被保険者は、適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者で、
厚生労働大臣の認可とその事業所の事業主の同意を受けることにより被保険者と
なった者です。 - ②高齢任意加入被保険者
70歳以上で老齢年金の受給権を有しない者が厚生労働大臣への申し出、または
認可を受けることにより、受給資格期間を満たすまで加入することができます。
この加入者を高齢任意加入被保険者と呼んでいます。
- ①任意単独被保険者
厚生年金保険料の決定方法
- 1.毎月の保険料
保険料は、被保険者1人ひとりの報酬(月額)を、区切りよい幅で区分されている報酬月額にあてはめた標準報酬月額をもとに、毎月の保険料や手当てなどを計算します。
標準報酬月額は厚生年金保険の場合、1級98,000円~30級620,000円の区分となっており、被保険者が負担する保険料は、毎月の給与から控除され、これを事業主が事業主負担分と併せて納付します。
- 2.報酬月額
報酬とは、賃金、給与、賞与などの名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものをいいます。ただし、デパート店員に支給される大入り袋など臨時に受けるものや、結婚祝い金などの恩恵的なもの、出張旅費などの実費弁償的なもの、年3回以下支給される賞与などは報酬から除きます。
年3回以下の賞与については、標準賞与額の対償になり、年4回以上支払われる賞与は報酬に含まれるので注意が必要です。
- 3.決定の時期
保険料を決定する次期は、次の3つがあります。- ①入社時の「資格取得時決定」
- ②実際に受けた報酬にあわせて毎年9月に定期的に算定し直す「定時決定」
- ③報酬が2等級以上変動したときに改定する「随時改定」
- 4.厚生年金保険料の計算方法
以下の式で計算した保険料額を、事業主と被保険者でそれぞれ折半負担します。
標準報酬月額に係る保険料額 = 標準報酬月額 × 保険料率
標準賞与額に係る保険料額 = 標準賞与額 × 保険料率
- 5.厚生年金保険料の納付方法
事業主が被保険者負担分を給与から天引きし、事業主負担分と併せて翌月の末日までに納付します。
- 6.育児休業中の健康保険・厚生年金保険料の免除
以下①~③の育児休業期間中については、健康保険・厚生年金保険の保険料は被保険者分及び事業主分とも保険者に申し出を行うことにより免除されます。
免除期間中も被保険者資格に変更はなく、保険給付には育児休業等取得直前の標準報酬月額が用いられます。
① 1歳に満たない子を養育するための育児休業
② 1歳から1歳6か月に達するまでの子を養育するための育児休業
③ 1歳(上記②の休業の申出をすることができる場合にあっては1歳6ヶ月)から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業
厚生年金の給付の種類
- 1.特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年4月1日(女性および坑内員・船員は昭和41年4月1日)以前生まれの65歳未満の者が次のいずれにも該当する場合に支給される年金です。- ①支給開始年齢に達していること。
- ②1年以上の厚生年金保険の被保険者期間があること。
- ③老齢基礎年金の受給資格期間(原則25年。ただし、昭和31年4月1日以前に生まれた者は、特例により最短で15年にまで短縮)を満たしていること。
- 2.老齢厚生年金
本来の老齢厚生年金は、次のすべての要件を満たしている者に支給される年金です。- ①65歳以上であること。
- ②1ヶ月以上の厚生年金保険の被保険者期間があること。
- ③老齢基礎年金の受給資格期間(原則25年。ただし、昭和31年4月1日以前に生まれた者は、特例により最短で15年にまで短縮)を満たしていること。
- 3.障害厚生年金
障害厚生年金は、次のすべての要件を満たしている者に支給される年金です。- ①初診日に被保険者である者。
- ②障害認定日(原則として、初診日から1年6ヶ月を経過した日)に障害等級(1級、2級、3級)に該当する障害の状態にある者。
- ③国民年金の保険料滞納期間が被保険者期間の1/3未満、または直近1年間に保険料の滞納がないこと。
- 4.障害手当金
初診日に被保険者であった者が5年以内に症状が固定し、3級に該当しない程度の障害の状態にある場合に一時金として障害手当金が支給されます。
- 5.遺族厚生年金
遺族厚生年金は、次の死亡者の要件、さらに遺族の範囲および順位に該当するときに支給されます。- ①死亡者の要件
被保険者または被保険者であった者が次のいずれかに該当する場合に支給されます。- 被保険者が死亡したとき。
- 被保険者であった間に初診日がある傷病により、初診日から5年を経過する日前に死亡したとき。
- 障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき。
- 老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている者が死亡したとき。
- ②遺族の範囲および順位
被保険者または被保険者であった者の死亡当時に生計を維持していた次の遺族の線順位者に支給されます。- 子のある妻、子
- 子の無い妻
- 55歳以上の夫・父母・祖父母または孫
- ①死亡者の要件